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相続登記の登録免許税免税措置について

2022-11-20

平成30年度の税制改正により、相続による「土地」の所有権の移転登記について登記申請の際の納める登録免許税が、期限付きで免税となる措置が定められました。この措置は国が進めている「所有者不明土地を円かつ適正に利用するための仕組み作り」の1つです。

免税措置の期限は、当初は令和3年3月31日まででしたが、令和3年度の税制改正で期限が1年延長されて、令和4年3月31日までとなりました。さらに、令和4年度の税制改正により、期限が3年延長されて、令和7年3月31日までとなりました。

 

登録免許税が免税(非課税)となるケース

登録免許税が免税(非課税)となるケースは下記のとおりです。

  • 死亡した相続人名義にする土地に係る相続登記
  • 固定資産評価額が100万円以下の土地に係る相続登記

 

相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合

個人が相続(相続人に対する遺贈も含む)により土地の所有権を取得した場合に、当該個人が相続による土地の所有権の移転の登記をする前に死亡したときは、平成30年4月1日から令和7年3月31日までの間に当該個人を当該土地の所有権登記名義人とするための登記については、登録免許税を課さないこととされました。相続登記が未了の土地について、さらに相続が発生している場合(数次相続や再転相続などと呼ばれます)に適用があります。

 

土地の固定資産評価額が100万円以下の場合

土地について相続(相続人に対する遺贈も含む)による所有権の移転の登記または表題部所有者の相続人が所有権の保存の登記を受ける場合において、不動産の固定資産評価額(土地持分の場合は、持分に応じた価格)が100万円以下の土地であるときは、登録免許税を課さないこととされました。

 

実際の登記業務では

実際の登記業務においての実感は、固定資産評価額が100万円以下であることの免税措置を受ける案件が多い印象です。都市部の土地に係る相続登記であれば、狭小土地であっても固定資産評価額が100万円を下回るケースは少ないですが、郊外の土地で、特に地目が「山林」や「雑種地」であれば、固定資産評価額が100万円を下回ることが多いです。

土地に係る固定資産評価額は以下のとおり判断・算出します。

  • 共有持分の場合は持分割合に応じた按分価格
  • マンションなど区分建物の土地は敷地権割合や持分に応じた価格
  • 土地が複数筆の場合は土地ごとの価格をもって判断
  • 100万円を超える場合は全額に課税(100万円分のみ免税にはならない)

 

相続登記の登録免許税免税措置を受ける注意点

相続登記手続きの際に登録免許税の免税措置を受けるために、ご注意いただきたいことがあります。

  • 「建物」については免税措置を受けることはできない
  • 相続登記の申請書に免税の根拠条文の記載が必要

  死亡した相続人名義にする土地に係る相続登記の場合には

   「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」と記載

  固定資産評価額が100万円以下の土地に係る相続登には

   「租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税」と記載

 

まとめとして

登録免許税の免税措置により、要件に該当する土地の相続登記は非課税となります。

  • 死亡した相続人名義にする土地に係る相続登記
  • 固定資産評価額が100万円以下の土地に係る相続登記

上記のどちらかに該当するなら、相続登記の登録免許税が免税となります。ただし、相続登記の申請書に根拠条文を記載しなければ、登録免許税は免税になりません。また、「土地」のみの適用であって「建物」については免税措置を受けることはできません。

せっかくの免税措置を受けることができる期間です、詳細は当相談所までご相談ください。

相続登記の義務化も決定しているので、免税要件に該当しているなら相続登記を申請しておきましょう。

法務局から「長期間相続登記等がされていないことの通知」が届いたら

2021-08-10

法務局から突然通知が届いたのですが…

法務局から「長期間相続登記等がされていないことの通知」が届いたけれど、どうしたらいいですか?、という相談をよくいただきます。

突然、心当たりのない通知が届いて驚かれるでしょうが、理由がある大切なお知らせなので内容をしっかりと確認して対応していただく必要があります。

「長期間相続登記等がされていないことの通知」とは

土地の所有権の登記名義人(所有者)が亡くなった後、相続人への相続登記手続きがされていないため所有者が不明となっている土地が全国に多く存在して社会問題化しています。こうした、所有者が不明となっている土地に係る問題を解消するため、全国の法務局では不動産登記簿の情報から長期間にわたって相続登記を行っていない土地を調査し、その土地の所有者の法定相続人を探索する作業を実施しました。

その結果から、土地の法定相続人となる方のうち任意の1名に対して相続登記の促進を目的として通知がされます。

通知の内容は

法務局から届く通知には、所有者が不明となっている土地の相続人である旨や、対象不動産を特定するために下記の情報が記載されています。

 ・ 対象となる土地の「不動産番号」と「不動産所在事項」

 ・ 現在の登記記録上の登記名義人

 ・ 法定相続情報の作成番号

いずれの記載内容も実際に相続登記手続きをする際に大切な情報となります。

通知が届いたらどうすればいい

通知の内容を確認した後に、まずは対象不動産と相続関係を確認するために不動産を管轄する法務局で、法定相続人情報と登記簿謄本(登記事証明書)の交付を受けます。

法定相続人情報には相続人一覧図に、現在の登記記録上の登記名義人(被相続人)の氏名・本籍・最後の住所・死亡日や、相続人の住所・氏名などが記載されています。登記簿謄本(登記事項証明書)には、長期相続登記等未了土地である旨の記載がされています。

通知の内容を確認した後

相続登記の手続きを進めることをおすすめします。通知を受けた方が唯一の相続人の場合は単独で手続きをすることが可能ですが、相続人となる方がご自身以外にいらっしゃる場合には全員に連絡のうえ協力して相続登記手続きをする必要があります。長期間お手続きがされないで放置されていた土地のため、相続人も複数名になり、手続きが煩雑になる場合もあります。

実際の手続きについては、遺産分割協議書の作成や、その他必要書類の取得や案内、相続人全員の書類の取りまとめが必要になります。ご自身で手続きを進めることも可能ですが、速やかな完了をご希望の場合には、当相談所にご相談ください。法務局での調査、相続人みなさまへのご案内なども含めてお任せいただけます。

相続登記の義務化が決定

2021-06-20

相続登記の義務化が決定

先日、「いよいよ相続登記が義務化かも!?」として所有者不明土地の解消に向けた法律が国会で審議されていることをお伝えしましたが、令和3年4月21日「民法等の一部を改正する法律」と「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が成立しました。相続登記の義務化をはじめ、関連する制度の創設が決定しました。

 

どうして相続登記が義務化される?

これまで、相続が発生しても相続登記は義務ではありませんでした。そのため、相続登記を申請しないまま放置された事例が多く発生して、深刻化する所有者不明土地問題の大きな要因となっています。相続登記がされないままで、登記簿の所有者名義が亡くなった方のままで実際の所有者が誰なのか分からないと、不動産の取引や利用に様々な障害の原因となります。

国や自治体においては、公共用地買収や災害対策工事が進められないという問題、民間においても、売買や有効活用ができないという問題の原因となっています。

 

相続登記ができない場合にはどうする?

冒頭にも書きましたが、国会で不動産の相続や所有者の住所を変更した際の登記申請を義務化し、違反した場合は10万円以下の過料を科すといった関連法が成立し、2024年度をめどに土地や建物の相続を知った日から3年以内に登記するように義務付けます。相続が開始してから3年以内に遺産分割の内容がまとまらずに相続登記ができない場合に、過料を逃れるためには少なくとも次の手続きを済ませる必要があります。

 ・ 法定相続割合による相続登記

 ・ 自分が法定相続人である旨を申出る相続人申告登記

 

法定相続割合による相続登記

遺産分割の協議は相続人全員の同意が必要になりますが、協議がまとまらない場合には、法律に定められた相続割合で相続登記をする方法があります。「とりあえず」の手続きとなるので、遺産分割の内容が決定した際には、あらためて遺産分割協議の内容を公示するための相続登記が必要です。

また、法定相続割合による相続登記は相続人の1人から申請することが可能ですが、申請人自身の持分のみではなく相続人全員について登記をする必要があることに注意が必要です。

 

自分が法定相続人である旨を申出る相続人申告登記

今回の法改正で、相続人が登記名義人の法定相続人である旨を申出る制度が新設されます。新設される「相続人である旨の申出等による登記(相続人申告登記)」は、単独で申請が可能で、添付書類も簡易なものになるようです。申出でによって法務局が職権で行うので相続人の負担にならない手続きになると考えられます。

しかし、手続きが簡単であるため、実際の相続内容を公示する登記ではありません。そのため、遺産分割の内容が決定した場合などには、本来の相続内容に合致した相続登記をあらためて申請する必要があることに注意が必要です

 

やっぱり、相続登記が必要なのか…

「法定相続割合による相続登記」も「相続人である旨の申出等による登記(相続人申告登記)」も実際の相続内容を公示する登記でありません。

つまり、相続すべき土地や建物といった不動産を相続人が売却や贈与などの手続きをする際には、あらためて相続登記を申請する必要があると言えます。

 

すでに相続が発生して手続きが終わっていない場合はどうなる?

2024年度をめどに義務化される相続登記ですが、義務化される以前に発生した相続についての相続登記はどうなるのでしょうか?

もちろん、施行された法律が適用されて義務化の対象になります。今、すでに相続登記などの手続きを放置されている方は、義務化が始まるまでの期間に手続き終えておくことをおすすめします。

いよいよ相続登記が義務化かも!?

2021-04-18

現在、開催中の国会では、所有者不明土地の解消に向けた民法や不動産登記法の改正案と、新法の「相続土地国庫帰属法案」が審議されています。順調に審議が進めば、今国会で成立する見通しです。

 

法案が成立すれば2023年度から施行される予定で、いよいよ相続登記の義務化などが現実となります。

相続登記の義務化とあわせて、何が変わるのかご案内します。

 

そもそも所有者不明土地とは

  • 不動産登記簿等の所有者台帳により、所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない土地

その主な発生原因となっているのが、相続登記や変更登記が放置されていることです。

現在、相続登記など実際の所有者へ名義を変更する手続きは義務ではないので、名義変更がされないまま放置されている土地が相当な面積になります。

2016年時点の所有者不明土地面積は、地籍調査を活用した推計で約410万haあり、九州(面積約367万ha)以上の広さになると発表されています。

 

所有者不明土地の問題点とは?

所有者不明土地は、不動産の取引や利用に様々な障害の原因となります。

国や自治体においては、公共用地買収や災害対策工事が進められないという問題、民間においても、売買や有効活用ができないという問題の原因となっています。

 

所有者不明土地の解消に向けて改正案のポイント

① 相続登記の義務化と相続人申告登記の創設

相続人が相続・遺贈で不動産取得を知ってから3年以内に登記申請することを義務化し、違反者は過料の対象になります。

相続開始から3年以内に遺産分割協議がまとまらずに相続登記ができない場合は、「法定相続分による相続登記」をするか、「相続人である旨の申出等による登記(相続人申告登記)」をすれば過料は免れます。

また、相続人に対する遺贈による登記や法定相続登記後の遺産分割による登記などについて、現行法では他の相続人等との共同申請となっているものが簡略化され、登記権利者が単独で申請することができるようになります。

 

② 氏名又は名称及び住所の変更登記の義務化

所有者の氏名又は名称及び住所の変更があった場合は、その日から2年以内に変更登記申請することを義務化し、違反者は過料対象になります。

 

③ 法務局による所有者情報取得の仕組みの制定

法務局(登記官)が、所有者の氏名又は名称及び住所の変更情報を取得し、職権で変更登記をすることができる制度が創設されます。

ただし、所有者が個人であるときは、本人への意向確認と本人からの申出を必要とします。

そして、この制度を可能とするため、今後新たに個人が不動産登記をする場合は、生年月日等の情報を法務局に提供することが必要になります。法人の場合は、商業・法人登記システム上の会社法人番号等が登記上に表記されます。また、国外に住所のある所有者に対しては、国内の連絡先となる者の氏名又は名称及び住所等の申告が必要になり、それらの情報が登記上に表記されます。

 

④ 土地の所有権放棄の制度化

相続等により土地を取得した者が、その所有権を放棄して土地を国庫へ帰属させることが可能となる制度が創設されます。

条件を全て満たした土地に限られ、申請時に手数料と、国が10年間管理するのに必要となる標準的な費用を申請者が納付しなければなりません。

 

まとめ

施行されると…

相続人申告登記の制度が創設されるように、相続に関する様々な手続きのさらなる簡略化が予想されます。

しかし、手続きの簡略化が予想される反面、相続登記をしなかった場合には過料などが科されます。

これまで以上に、速やかな対応が求められるようになるのは間違いがないので、専門家にご相談することをおすすめします。

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