現在、開催中の国会では、所有者不明土地の解消に向けた民法や不動産登記法の改正案と、新法の「相続土地国庫帰属法案」が審議されています。順調に審議が進めば、今国会で成立する見通しです。
法案が成立すれば2023年度から施行される予定で、いよいよ相続登記の義務化などが現実となります。
相続登記の義務化とあわせて、何が変わるのかご案内します。
そもそも所有者不明土地とは
- 不動産登記簿等の所有者台帳により、所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない土地
その主な発生原因となっているのが、相続登記や変更登記が放置されていることです。
現在、相続登記など実際の所有者へ名義を変更する手続きは義務ではないので、名義変更がされないまま放置されている土地が相当な面積になります。
2016年時点の所有者不明土地面積は、地籍調査を活用した推計で約410万haあり、九州(面積約367万ha)以上の広さになると発表されています。
所有者不明土地の問題点とは?
所有者不明土地は、不動産の取引や利用に様々な障害の原因となります。
国や自治体においては、公共用地買収や災害対策工事が進められないという問題、民間においても、売買や有効活用ができないという問題の原因となっています。
所有者不明土地の解消に向けて改正案のポイント
① 相続登記の義務化と相続人申告登記の創設
相続人が相続・遺贈で不動産取得を知ってから3年以内に登記申請することを義務化し、違反者は過料の対象になります。
相続開始から3年以内に遺産分割協議がまとまらずに相続登記ができない場合は、「法定相続分による相続登記」をするか、「相続人である旨の申出等による登記(相続人申告登記)」をすれば過料は免れます。
また、相続人に対する遺贈による登記や法定相続登記後の遺産分割による登記などについて、現行法では他の相続人等との共同申請となっているものが簡略化され、登記権利者が単独で申請することができるようになります。
② 氏名又は名称及び住所の変更登記の義務化
所有者の氏名又は名称及び住所の変更があった場合は、その日から2年以内に変更登記申請することを義務化し、違反者は過料対象になります。
③ 法務局による所有者情報取得の仕組みの制定
法務局(登記官)が、所有者の氏名又は名称及び住所の変更情報を取得し、職権で変更登記をすることができる制度が創設されます。
ただし、所有者が個人であるときは、本人への意向確認と本人からの申出を必要とします。
そして、この制度を可能とするため、今後新たに個人が不動産登記をする場合は、生年月日等の情報を法務局に提供することが必要になります。法人の場合は、商業・法人登記システム上の会社法人番号等が登記上に表記されます。また、国外に住所のある所有者に対しては、国内の連絡先となる者の氏名又は名称及び住所等の申告が必要になり、それらの情報が登記上に表記されます。
④ 土地の所有権放棄の制度化
相続等により土地を取得した者が、その所有権を放棄して土地を国庫へ帰属させることが可能となる制度が創設されます。
条件を全て満たした土地に限られ、申請時に手数料と、国が10年間管理するのに必要となる標準的な費用を申請者が納付しなければなりません。
まとめ
施行されると…
相続人申告登記の制度が創設されるように、相続に関する様々な手続きのさらなる簡略化が予想されます。
しかし、手続きの簡略化が予想される反面、相続登記をしなかった場合には過料などが科されます。
これまで以上に、速やかな対応が求められるようになるのは間違いがないので、専門家にご相談することをおすすめします。