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遺言書とは
どうして、遺言書を作るんでしょうか?
「遺族が困らないように」
「伝えたいメッセージを残すために」
「遺産のことで遺族が揉めないように」
さまざまな理由で遺言書は作成されますが、自身のことを書く遺言書は、多くの場合が残された親族のことを思って作成されます。
遺言書とは、
自身が亡くなった後の遺産の分配や処分の方法、遺言書に記載していることを実行してもらう人の氏名、未成年の子どもの世話をしてもらう人に氏名などを明記した法的な書類のことです。
法律的に効力がある遺言書を作成するためには、決められた規定を守る必要があり、規定を守っていない遺言書は無効となるので注意が必要です。
遺言書の種類
一般的に利用される遺言書は次の3種類です。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
自身の目的や状況に合わせて、遺言書を作成する際の方式を選択することができます。
ただし、正しい方法で作成しないと無効になるケースもあるので、記載する内容と作成する方式をしっかり確認する必要があります。
せっかく遺言書を作成したのに効力が無ければ、親族間のトラブルを招いたり、相続の手続きが煩雑になる可能性があるので、ご注意ください。
自筆証書遺言
遺言者自身で作成して保管をする遺言書です。
遺言者本人が遺言書の全文・日付・氏名を手書きをして、印鑑を押印することで完成します。
遺言者の死後、遺言書を開封をする際には家庭裁判所で「検認」の手続きが必要です。
「自筆証書遺言」は費用がかからず、証人も不要なので作成しやすい方式ですが、以下の点は注意する必要があります。
- 形式や内容に不備があれば遺言書が無効になる場合がある
- 紛失、盗難、改ざんの可能性がある
- 家庭裁判所の検認の手続きに時間と手間が必要になる
なお、相続法の改正によって、遺言書に記載する「財産目録」については本人の手書きである必要がなくなり、パソコンで作成した書類、通帳のコピー、不動産の登記事項証明書などを使用することが可能になりました。
また、「自筆証書遺言書保管制度」を利用して法務局に自筆証書遺言を預けた場合には、家庭裁判所での検認が不要になりました。
自筆証書遺言書保管制度
2020年7月10日から法務局による自筆証書遺言の保管制度がスタートしました。
相続法の改正による遺言書作成と利用を促進新しい制度で、自筆証書遺言を法務局で事前にチェックをし、その原本を保管してくれるという制度です(手数料は3900円)。
この制度のメリットは、
- これまで自筆証書遺言で必要とされていた家庭裁判所による検認手続きが不要になる
- 法務局が保管するので紛失、盗難、改ざんの恐れがない
この制度を利用する場合の注意点
- 遺言書を作成した本人自身が法務局に行き、手続きをする必要がある
⇒ 家族などの代理人による手続きは認められない - 自筆証書遺言の様式が定められている
⇒ 用紙サイズ、上下左右の余白、訂正方法などは細かく定められている - 法務局は内容のチェックはしない
⇒ 法務局に保管をしても内容に不備があれば有効な遺言書にはならない
公正証書遺言
公証人に遺言書の内容を伝えて、公証役場で作成する遺言書です。
作成に公証人が関わるので、形式や内容に不備のない遺言書を作成することができ、遺言者が亡くなった後に家庭裁判所の検認は必要ありません。
遺言書の原本は公証役場に保管され紛失や改ざんのおそれがないので、安心して利用できる方式ですが、以下の点は注意する必要があります。
- 公証役場での手続きに費用が必要
- 証人2名の立会が必要
(相続人になる方は証人になれません)
なお、証人は公証役場の職員、司法書士や事務所所員に依頼することも可能です。
秘密証書遺言
遺言者が自身で作成して封印した遺言書を公証人に提出して、遺言書の保管を依頼することができる遺言書です。
遺言書が公証役場で保管されるので紛失や改ざんのおそれはありませんが、自筆証書遺言と同様に遺言者の死後、遺言書を開封をする際には家庭裁判所で「検認」の手続きが必要です。
遺言内容を誰にも知られることがない方式ですが、以下の点は注意する必要があります。
- 形式や内容に不備があれば遺言書が無効になる場合がある
- 公証役場での手続きに費用が必要
- 証人2名の立会が必要
(相続人になる方は証人になれません) - 家庭裁判所の検認の手続きに時間と手間が必要になる
遺言書を作成する方は公正証書遺言か自筆証書遺言のどちらかの利用がほとんどなのが現状です。
相続法の改正で「自筆証書遺言書保管制度」が広く利用されようになると、秘密証書遺言の利用件数はより少なくなると考えられます。