財産の中で不動産の割合が高い場合、次のようなご相談をいただきます。
- 高齢になったときには、不動産を管理・運用を任せたい
- 生活費や施設入所の費用のために、不動産を処分する必要がある
財産の中で不動産の割合が高い場合には、不動産を維持するための管理・運用に手間がかかりますし、不動産を現金化するためには自身が契約をして処分をする必要があります。
不動産の所有者が高齢になり、認知症などの理由で意思能力が低下した場合には、不動産を管理・運用・処分するための次のような手続きが自身でできなくなります。
- 不動産を修繕や補修するための依頼や契約をすること
- 収益不動産について貸主として新たな賃貸契約をすること
- 不動産を売却するための売買契約をすること
不動産を所有する場合には、いろいろな心配事がありご相談をいただきます。
自身が不動産の管理・運用・処分することが難しくなったときのこと、また自身が亡くなって相続が発生したときのことを十分に想定して、どのような手続きをするべきなのか対応を検討するべきでしょう。
このページの目次
財産の中で不動産の割合が高い場合の対応策として
家族信託を利用しない場合
家族信託を利用しない場合には、次のような対応が考えられます。
- 任意後見制度を利用して、子などの親族を将来の後見人に指定する。
⇒ 財産に不動産が多い場合には、家庭裁判所の監督が厳しくなることが予想される。
⇒ 相続が発生した後のことには対応できない。 - 相続時精算課税制度を利用して、子へ生前贈与をする。
⇒ 贈与税の心配は避けられるが、不動産取得税・登録免許税は負担する必要がある。
⇒ 生前贈与の後に売却をすると、通常の譲渡所得税が課税される可能性がある。
家族信託を利用した場合
家族信託を利用した場合には、次のような対応が考えられます。
- 親を委託者兼受益者、子などの親族を受託者として信託契約を締結。
⇒実家不動産と預貯金などの金銭を信託財産として、子に管理・運用・処分する権限を与える。 - 「信託」を原因として、実家不動産を親から子へ所有権移転する。
- 金銭は信託口口座を開設して分別管理をする。
家族信託を利用した場合のメリット
財産の中で不動産の割合が高いケースで家族信託を利用して準備をした場合、家族信託のため登記手続きに必要な登録免許税は、生前贈与による場合と比較すると少額で済みます。
また、不動産取得税や譲渡所得税の負担もありません。
不動産の所有者である委託者が認知症などになっても、受託者の権限で管理・運用・処分が可能で、不動産を売却した場合も売却代金を金銭信託に変換することができます。
信託された財産が不動産から金銭に変わっても、信託財産であることに変わりはないので、継続して受益者のために管理・運用・処分することができる。
委託者(不動産の所有者)が亡くなって相続手続きの際に、信託財産については遺言執行や遺産分割協議などが必要ないです。
金融機関から融資を受けている場合はご注意ください
財産の中で不動産の割合が高い場合、金融機関から融資を受けていることが多いです。
金融機関から融資を受けている方が家族信託の利用を検討する際には、事前に金融機関にその旨と通知して承諾を受けておくべきです。
金融機関に通知することなく家族信託契約を締結すると、場合によっては金融機関との契約に違反する行為に該当する可能性もあります。
融資残額の一括返済を求められることになりかねませんので注意が必要です。
家族信託を利用したお手続きは十分にお話をうかがって対応策をご提案する必要があります。
家族信託についてのご相談は、当相談所をはじめ専門家にお問い合わせください。